ちかちかと、夜空に散らばった星が瞬く。まるで、自分を見てほしいと星たちが競っているようだ。

「今日は星がきれいだな」

草原に寝そべったまま、ロイドが言った。

「そだね。最近はずっと曇り空で見えなかったから、なんだかうれしいね」

となりで彼と同じように寝そべりながら、コレットはそっとロイドを盗み見た。

彼は幼いころから星を眺めるのが好きで、夜になるとよく屋根によじ登っていた。それは今も変わらず、飽き性な彼にしては珍しく、ただじっと星を見ている。
コレットは、そんなロイドを見るのが好きだった。彼のそばにいるだけで幸福だった。

「ねぇ、ロイド」

「ん?」

「しいなに聞いたんだけどね、今日は『タナバタ』って日なんだって」

「『タナバタ』?」

「うん。オリヒメとヒコボシって恋人が、一年に一度だけ会える日なんだよ」

するとロイドは首をかしげた。

「一年に一度だけ?なんで他の日は会えないんだ?」
「二人がお互いを想い合うあまりにお仕事をさぼったから、怒ったオリヒメのお父さまが天の川っていう星の川で二人を引き裂いちゃったからだって。でも二人があんまりにも悲しむから、一年に一度だけ会うことが許されたの。
だから、このタナバタの日にヒコボシは天の川をわたってオリヒメに会いに行くんだって」

「ふーん…。でもさ」

よっ、とはずみをつけてロイドは身をおこした。

「そんなに好きなら、いつだって川をこえて会いに行けばいいんじゃないか?舟でも作ってさ」

「あ、そっか。でも、それじゃ約束をやぶっちゃうよ?」

「それは仕事をさぼったからだろ。だったらこれからは仕事をちゃんとやるって父さんに謝ればいいんだよ。
俺だったらそうするな。コレットと一年に一回しか会えなかったら、すげー寂しいからさ」

「えっ…!?」

コレットは思わず飛び起きてロイドを見つめた。
心臓の音が、やけにうるさく聞こえた。
「ロイド…」

「それに、親父やジーニアスやリフィル先生とか、会いたい人がいっぱいいるから、一日じゃ絶対たりねぇよ。
俺がヒコボシだったら、泳いででも川を渡ってみんなに会いに行くぜ」

にっこりとロイドが笑う。それにつられて、コレットもほほえんだ。
それは彼女の望んだ答えとは少しちがっていたが、彼らしい、と思った。

「そうだよね。一年に一度しか会えないなんて、悲しいもんね」

「だろ?」

得意気に笑って、ロイドはまた星を眺めた。

「オリヒメとヒコボシ、ちゃんと会えたかな」

「そだね。会えるといいね……」


草原で寄り添う二人を、数多の星たちが見守っていた。