「あ、団長!おはようございます!」
クラトスが詰め所の扉を開けるとロイドの明るい挨拶が出迎えた。
ああ、と頷くクラトスの表情はいつもと同じく冷静沈着そのものだった。
王に仕える騎士の証である団服を纏っている今、私情を挟むことは許されないのだ。だが――
「あっ!そうだ団長、昨日の舞踏会本当にサボったんですね。あーもったいない。すごかったんですよいろいろと!」
詰め所の中を移動しながら、ロイドが興奮した様子で言った。
彼は堅苦しい規則や矜持より自分の信念を優先させるため、職務中にも関わらずしょっちゅうプライベートについて口にするのだ。
子供のように目を輝かせているロイドにクラトスはやれやれと息をついた。
「…ずいぶんと楽しんだようだな」
「それはもうすごかったんですよ!七面鳥のローストや蟹の身がぎっしり詰まったグラタン、最高級の皮のぎりぎりまで甘いメロンとかが全部食べ放題で!」
「きっと、お前が今まで鍛練を怠らなかったことへの褒美だろう。だが食べ過ぎには注意しろ。特にお前は肉ばかり食べて野菜を口にしようとしないからな。健康な身体を保つのも騎士の使命だぞ」
するとロイドがぷっと吹き出した。