序章




―――かつて、この世界に白銀の神が舞い降りた。
神――すなわち唯一神レヴィネル――が大地に触れた時、数多の命が生まれた。

神により生み出されし太陽の髪と海の瞳をもつ知恵の民と、夜の髪と瞳をもつ力の民。
二つの種族は神への忠誠を誓い、従者となった。

やがて神は空に還る時、我が子に大地を託した。
神の子はレヴィネルを奉る帝国、レヴィネリアをつくり世界に平穏をもたらした。
この神の子こそ、我らレヴィネリア人の始祖である。

レヴィネル教第47代法王
フレデリック・セルン




「……これでは足りない」

古びた聖書を読み終えた男はそう呟いた。

ふと、柔らかな風を感じて振り返ると、開け放たれた窓の外には青々とした野山が広がっていた。
そのところどころで春の花が咲き誇り、すぐそばで子供たちが走り回っている。

「――確かに世界を作ったのは神だ。だけど本当の平和を築いたのは、君だったんだね」

記憶の中の少女に微笑むと、男は羽根ペンを手に取った。