「おかあさまはおとうさまのどこか好きなの?」

「へっ!?」

娘の突然の問いにしいなは思わず声を裏返した。

「ど…どうしたんだい急にそんなこと聞いて」

動揺を隠すためにしいなはにっこりと笑った。
すると彼女の娘――アイリスは小首を傾げた。

「だっておとうさまって女好きだしちゃらちゃらしてるし、どこがいいのかなって思って」

「あー…確かにそうだね」

「でしょ?あ、でも見た目はすごくキレイよね。おかあさまって『めんくい』なの?」

「…あんたどこでそんな言葉覚えたんだい」

「おとうさまに教えてもらったの」

がっくりとしいなはうなだれた。それが父親のする事か?

「ねぇねぇ、おとうさまのどこが好きなのおかあさま」

「うーん…そうだねぇ。優しいところ…かな」

確かに父ゼロスは優しい。
アイリスをよく抱きしめて頭を撫でてくれるのだ。
母に対してもそれは同じだが、その度に母は照れて父を殴っていた。

「あと、いい加減に見えて実はちゃんとしてるとことか、時々かっこいい顔をするとことかさ」

そう話す母の顔は少し赤くなっていた。
アイリスはそれを見てなんだか嬉しくなった。

「おかあさまはおとうさまのこと、好き?」

するとしいなは周りを見回した後、アイリスに耳打ちした。

「あいつ…ゼロスには内緒にしとくれよ。…大好きだよ」