1 約束



――ココ、約束するよ…。

青年は六つ年下の少女と目線を合わせるためにかがんだまま、にっこり笑ってそう言った。

――君のために、僕はこの戦争をとめてくる。

しかし、どれだけ彼が優しく囁いても、少女はそっぽをむいたままだ。

目を合わせたら、きっと彼は行ってしまうから。
自分のために、旅にでてしまうから。
泣きそうなのが、ばれてしまうから――

歯を食いしばって涙を堪えている少女を見て、青年は微かに笑った。

――じゃあ、こうしよう。僕がもし、戦争を終わらせることができたら…ココ。僕と結婚してほしい。

少女は驚いて振り向いた。ようやくこちらを見た少女に青年は嬉しそうに笑う。

――君と結婚するために、僕は必ず帰って来る。

…これではまだ納得してくれない?

少女は慌てて首を横に振った。顔は熟れた林檎のように真っ赤だ。

――よかった。断られたらどうしようかと思ってたんだ。

すると、青年は顎に手をやって少し考えた。

――普通、婚約をするときは、指輪かなにか、贈りものをするものだけど…。

青年はポケットをガサガサ探った。が、これから旅をするのだから、余分なものはなど持っているはずもない。

――…仕方がない。今は持ち合わせがないから…これで我慢してくれ。

小さな唇に,そっと青年の唇が重なった。