王の入室を告げる声に、クラトスは片膝をついた。彼にならい部下たちも礼をとる。
やがて衣擦れの音とともに王が現れた。王は玉座につくと、威厳のこもった声で命じた。
「面をあげるがよい」
は、と応え、クラトスは顔をあげた。
鮮やかな鳶色の髪に、涼しげな鳶色の瞳。騎士にしては細身だが、しなやかな筋肉を備えた身体。
まさに絵に描いたように完璧な騎士に王は満足そうに微笑んだ。
「このたびは見事な働きであったぞ、クラトス」
「もったいなきお言葉です」
「進軍してきたシルヴァラントを撃退するだけでなく停戦までとりつけてくるとは。さすがだな」
顔色をひとつ変えず、クラトスは頭をさげた。
「他の者もよくやってくれたな。さすが我がテセアラ王国一の騎士団だ」
「ははっ」
部下たちが誇らしげに応える。忠実な騎士たちに王は気をよくした。
「今宵はそなたたちを讃え宴をもよおそう。皆、存分に楽しむがよい」
本来なら社交界に出ることのない身分の部下たちは、王の提案に顔を輝かせた。
そんな中、クラトスはひそかにため息をついた。
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