「いやぁ、やりましたね団長!」

謁見を終えた途端、目を輝かせる部下にクラトスは再びため息をついた。

「はしゃぎすぎだぞ、ロイド」
「だって、舞踏会ですよ!俺たちのような平民上がりが出られるなんてっ」

栗色の髪と瞳をもつ青年――ロイドはクラトスの腹心の部下であり優れた騎士でもあるのだが、非常に子供っぽいのが玉に傷だった。

「楽しみだなぁ…。いつもは警護の合間に眺めるだけのあのご馳走の山を、今日は好きなだけ食べられるんだ…!」

すると他の団員たちが一斉に笑い転げた。

「ばっかだなぁロイド!そんなことよりも貴族のお偉方にコネ作るほうがよっぽど大事だろうが。
上手くいけば逆玉の輿のチャンスなんだぞ」
「おまえはいくつのガキだよ!こりゃいつまでたっても色気より食い気だな」
「う…うるさいな!団長だってご馳走楽しみですよね!?」

突然振られたクラトスは気まずげに目を逸らした。

「いや…。私は舞踏会にでるつもりはない」
「ええっ?どうしてですか?」
「…色々と面倒だからな。おまえたちは楽しんでくるといい」

軽くロイドの肩を叩くと、クラトスはどこかへ立ち去って行った。



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