夜の帳が降りたころ、クラトスは城の一角にある兵舎の自室で剣の手入れをしていた。
開け放たれた窓から時折風にのって舞踏会の音楽が聞こえてくる。
「宮廷音楽か…。久しぶりに聞くな」
ここ何ヶ月の間、戦場で剣戟の音しか聞いていなかったことを思い出しふと耳をかたむけたとき、扉が叩かれた。
「…?誰だ?」
部下たちは皆舞踏会の警護に借りだされているはずだ。もしや彼らでは対処しきれないことでも起きたのだろうか、とクラトスは急いで扉を開けた。
「あら。やっぱりここにいたのね」
扉の向こうに立っていたのは、無骨な兵舎に似合わぬ華やかなドレスを纏った女がだった。
「ソレイユ姫…!」
思わぬ人物の来訪にクラトスが目を丸くすると、ソレイユはどこかあどけなさの残る顔で微笑んだ。
「庭で散歩をしたいのだけどつきあってくださる?宴を抜け出してきたものだから、従者を置いてきてしまったのよ
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