テセアラの王女であるソレイユと伯爵家の嫡男であるクラトスは幼なじみだった。
遊び相手として彼女に初めて会った時のことを、クラトスは今でも覚えている。
ゆるく巻かれた金の髪に、透きとおるほど白い肌。そして自分を見つめるつぶらな瞳。
なんとも愛らしい姫君は初めてできた友人をいたく気に入り、毎日のように呼び寄せては一緒に遊んでいた。
兄弟のいなかったクラトスも幼い姫を妹のように可愛がった。
やがて時が過ぎゆき、クラトスが騎士団に入団してからはめっきり会う機会が少なくなったのだが、今もソレイユはあの頃のまま、自由奔放で甘えん坊で、そのくせ王族らしい気品を漂わせていた。
(いつまでも純粋な方だと喜ぶべきなのか、それとも…)
今や『テセアラの華』と呼ばれるほど美しくなった姫が拗ねてそっぽを向いているのは、なんとも滑稽だった。
クラトスが笑っているのに気づくと、ソレイユは頬を赤く染めた。
「な、なんです?何がおかしいの」
「いえ…何でもありませぬ」
「ふん。どうせ相変わらず子供っぽいとでも思ってるんでしょう。でも、それならあなたも同じですからね」
「……それはどういう…」
するとソレイユはクラトスに向かってびしっと指を突きつけた。
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